「女性は性的に無垢である」という偏見と性産業差別 「AV新法」の暴かれた杜撰な中身【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「女性は性的に無垢である」という偏見と性産業差別 「AV新法」の暴かれた杜撰な中身【篁五郎】

筆者撮影:平祐介弁護士

 

◾️憲法遵守すらできていない法律がAV新法だった!

 

 パネリストのひとり、平祐介弁護士は、AV新法の恐るべき欠陥を明らかにした。法律は条文1条ごとに意味や解釈等を解説している資料があり、法曹では逐条解説と呼んでいる。例えば、風営法には職業選択の自由とか表現の自由といった文言が出てくるのだが、AV新法に関しては「職業選択の自由」「表現の自由」といった言葉が一つも出てこなかったそうだ。

 平弁護士はこれには驚いたと語った。「これ(AV新法)を主導的に作った国会の先生方は、制限される側の人権について一切考慮をしなかった。その証拠ではないか」と批判。さらに「法律というルールを作る場合、制限によって守られる側、制限される側双方がプロセスの段階で対等な立場で議論を尽くし、情報が質量ともに十分に収集されてから制定すべき」と述べ、今回のAV新法には全くできていないと指摘。速やかに憲法遵守義務に則った内容の法改正を希望した。

 

◾️「女性は性的に無垢である」という偏見で性産業は差別されてきた

 

 その後は、「エンターテイメント表現の自由の会」代表の坂井崇敏氏によるパネルディスカッションがスタート。表現は「上から目線の価値観で規制されてきたと感じている」と述べ、具体例を上げて表現規制の歴史を語った。現在は今まで以上に厳しくなっており、クレジットカード会社が、ダウンロードサイトの文言に対して「表現を変更しなさい」という規制をかけてきたという。性産業に対しても同様の規制が入る可能性を示唆した。 

 最後に関西大学社会学部守如子教授からは「女性たちの中にも、AVを見ている人がいるっていうことを忘れずに議論していく必要がある」と提言。男性には性的な自由を認めてきたが、女性は性的に無垢であるはずという偏見によって性産業は差別されてきたと述べた。AV新法についても、性産業で働く女性はイヤイヤ働いているという色眼鏡で見られている。そんな間違った見方で現在性産業で働く女性を救うという救済的な視点に立っているという。

 

筆者撮影:パネルを使って説明している守如子関西大学社会学部教授

 

 AV新法の問題点についても救済的視点に立っていることを挙げ、「性産業で働く当事者、特に出演される方々の視点が置き去りになっていることが一番の大きな問題ではないか」と指摘した。守教授が指摘したことはパネラー全員が異口同音に問題点として挙げている。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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